天然真珠とケシ真珠について
世界中で真珠というジュエリー素材を「知らない」という方は少ないと思いますが、1920~30年頃を境にその素材に大きな変化があったことをご存じでしょうか。
その変化とは天然真珠から養殖真珠への転換です。
紀元前2000年頃からペルシャ湾(主にバーレーン)では天然真珠を採取する産業が盛んで、その歴史はおよそ4000年も続いていたのです。
ペルシャ湾にはアコヤガイ(Pinctada fucata)の近縁種 マッハーラ(Pinctada Vulgaris)という真珠貝が数多く生息し、その貝から採取された天然真珠こそが1930年以前の真珠だったわけです。天然貝から真珠が採取される確率は1/10,000個と極めて出現率が低く、その価値はとても高かったようです。
大きさが4mmを超えるものは非常に珍しく、20世紀初頭までのアンティークジュエリーに使われている真珠の粒が小さいのはそのためですね。
天然真珠の形成過程は様々ですが、「真珠成分を分泌する表面上皮細胞がまれに体内で成分を分泌し、形成された真珠」が天然真珠です。
その4000年近い天然真珠の歴史を塗り替えたのが御木本幸吉翁でした。1916年、幸吉翁はアコヤガイで真円真珠を作る特許を取得し、真円養殖真珠の量産を始めたのです。このことにより世界中のマーケットで真珠というジュエリー素材は、天然から養殖真珠に移り変わっていきました。
今現在、世界中で流通している真珠というジュエリー素材の99.9%は養殖真珠なのです。
御木本幸吉翁により始まった真珠養殖産業は世界に広がり、シロチョウガイで南洋真珠、クロチョウガイで黒真珠が生産されています。
が、実は・・・今でも天然真珠に近いケシ真珠というものがあるのです。
それは、真珠養殖されている貝の体内から天然真珠と同じ過程で形成された真珠です。
シロチョウガイを用いて真珠を生産している我々はそれを南洋白蝶ケシと呼んでおりますが、形も色も様々でとても美しいのですよ(写真参照)。
産出量が極めて少ないため、市場に出している我々ですらジュエリーに加工されたものをほとんど目にする機会がありません・・・。
どうぞジュエラーの皆さん、製品に仕上げた南洋ケシのジュエリーを見せてください!
この記事へのコメントはありません。