2022年 社長インタビュー(後編)
コロナ禍の2年を振り返って(その3)
ー近年、地球温暖化といった気候変動も大きな問題となっています。養殖場への影響、今後の課題や対応策をお聞かせください。
山本:温暖化は確実に進んでいる。振り返ると2016年、関連会社のあるフィリピンでエルニーニョ現象による水温の高止まりが続き、稚貝に多大な影響を及ぼした。当時の対策として、温暖化に対する備え、あるいは保険として稚貝の大量生産を試みた。ところが、狭い面積で数多く育成したことで稚貝の弱体化を招いたという苦い経験がある。貝の健康面に鑑み、当面は過疎の状態で貝を育てる、つまり、小サイズ生産による減産傾向となろう。
山本:今までは4年に1度程度、温暖化を顕著に感じてきたが、いずれ3年あるいは2年に1度のペースとなると見ている。温暖化に耐性を持つ貝を育成する必要性は十二分に認識し、現場にも督励しているが、これはなかなか難しいミッションであることは否めない。
ー最後に第31期の総括と、2022年の真珠業界そして我々の商売展望をお願いします。
山本:既にお話ししたとおり、南洋真珠に対する需要に対し、GOLDEN PEARLの供給量は3~4割減少している。つまり、購入希望が生産数を上回っている状態で、我々サイドにとっては商売上有利と考える。皮肉なことに、コロナという「目には見えない手」によって減産に向かったことがプラスに働いているとも言え、語弊があるかもしれないが商売の面白みも感じている。一方で、一度減産したものは、すぐには増産へ転換できず、マーケットが活況に転じても元の体制に戻るには最低2年はかかることも意識している。ただ今後、先の見えないマーケットに対して生産業社が増産傾向に向かうことはないであろうと思われる。
山本:今年の2月は北京で冬季五輪が開催される。消費面でのオリンピックロス、経済成長率の変動は見込まれるものの、中国の需要は継続すると予想する。減産により供給の絶対数が少ないので、急に中折れするとは思っていない。サイズについては、小さめのサイズが中国で人気がある。欧米と比べアジア人は小柄なので、大きなサイズより小さいサイズの方が身体とのバランスもよいようだ。また、金色はヨーロッパ人よりアジア人に人気がある。宗教的な要因もあるが、中国やインドなどではゴールドカラーや翡翠のグリーンは健康と一族に富をもたらす象徴、と古くから言われて好まれている。
山本:前述の状況もあり、近年、バイヤーからGOLDEN PEARLの小さいサイズに対するリクエストが増加傾向にある。南洋真珠は10ミリ以上のサイズが一般的だが、我々は4、5年前から9ミリ以下の小さめの真珠生産にトライしてきた。挿核貝回りからすると利幅が少なく、同業他社は、小サイズの積極的な生産に二の足を踏む場合が多い。それを承知の上で、我々は「人のやらないことをやる」路線を選択した。当初は懐疑的な見方もされていたが、今はマーケットに受け入れられている手ごたえを感じる。
山本:第32期は減産に転ずるが、小サイズのGOLDEN PEARLは我々しか作れないであろう、という自負がある。2022年から23年にかけての生産量は減るが、このサイズへのリクエストは多いと思っている。大きくてもキズがあり色の薄い珠よりも、テリが良くキズのない、高品質のGOLDEN PEARLの生産に取り組むという従来の姿勢を今後も堅持してゆく。市場のトレンドも見据えながら、最終的には大小さまざまなサイズで高品質の金色の真珠を安定的に供給できる体制を目指している。
ー長時間、ありがとうございました。
(了)
2019年末、中国武漢から初報告のあったコロナウイルス、COVID19。以来2022年の現時点まで、感染は世界規模で拡大を続け、否が応でも我々はこのウイルスと向き合うことを余儀なくされている。今回、弊社代表取締役 山本幸生がこの2年を振り返るとともに、次期(第32期)への展望を語るインタビューを2022年1月に実施した。
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