ゴールデンパールの物語 第三話 後編
ゴールデンパールの物語 第三話(後編)
いつものようにオペ後2年間育てた貝から真珠を収穫していた工場長と私。
工場長「なぁ、白い珠、出てこーへんなぁ」
私「ホントですね。工場長、ちゃんと白を狙ってオペしました?」
工場長「何ゆーてんねん。今、珠出ししたのはキミがオペした貝やで(笑)」
けっこう凹みながら、続いて工場長がオペした貝からも収穫を始めると、
私「工場長のも白い珠、出てきませんねぇ(笑)」
工場長「おかしい・・なんでや・・なんでや・・」とブツブツつぶやいてキョドリながら珠出し。
浜揚を終えてみると、収穫された真珠の山は真っ金きん。その浜揚を前にして工場長としばし無言。8年もの間、白系の真珠を作るため研鑚を重ねたと自負していた我々の想いはいとも簡単に打ち砕かれたのでした・・
「どーするコレ。鬼の上司さんに見せたら怒られるで。いっそのこと無かったことにして、海に沈めてまうか?」「いぇいぇ貝台帳に載っていますからそれはバレますょ・・」
長い間、試行錯誤してわかったつもりでいた養殖環境への理解はまだまだ足りていなかったようデス・・。
まぁ焼き畑農業で坊主になった山肌に植林を行ったり、ダイナマイトや青酸カリによる違法漁業の根絶活動を行うなど、地域への地道な自然保護活動が海の神様のお心にかない、生産のターニングポイントとなるヒントを与えてくれたのかもしれません。
「使用しているエリアは白系の真珠を作るよりも濃い黄色(金色)を狙う方が有利かも?」という可能性を指し示してくれました。
商業規模で南洋真珠養殖が可能なエリアを確保することができても、その場所でどんな真珠を作るのが適切か。それを理解するには多くの時間とお金がかかります。
8年を経て振り出しに戻された我々ですが、やっと目指すものが見つかったかもしれない、という希望を抱き、心新たに熱帯の海に立ち向かうのでした・・(なんかカッコイイ!)。
次回は「触れてもよいのかな?」と書くことを躊躇しているエグエグなフィリピンのカントリーリスクや養殖現場のセキュリティについて、紙面に掲載できる限界に挑戦しながら書いていきたいと思います。
(第四話に続く)
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